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食べてはいけません(1)

「週刊新潮」の「食べてはいけない『国産食品』」は本当に食べてはいけないのか?
「食べてはいけない」。事は命にかかわる食品だけにこう言われると、気にせずにはいられないのが人間の性(さが)である。ただ、こう言い切るには根拠が必要なのは言うまでもない。物議を醸している「週刊新潮」の「食べてはいけない『国産食品』」を検証してみると……。
「食べてはいけない国産食品」は本当に危険か? 4つのポイントで検証
「消費者の不安を煽っていますよ」
「週刊誌を読んで買うのをやめるなんて流されすぎています。新潮さんのロジックの不備を指摘するべきです。不慣れな人たちが記事を編集しているから粗(あら)はいっぱいある。消費者の不安を煽っていますよ」
こう語るのは、加工食品ジャーナリストの中戸川貢氏。「週刊新潮」の連載記事「食べてはいけない『国産食品』実名リスト」に何度もコメントを寄せ、添加物や化学調味料の危険性を指摘してきた人物だ。
5月17日発売号から6号連続で掲載され、添加物などを含んだ国産の商品の実名をあげて、〈専門家が危険性を告発〉するという新潮の“目玉連載”が、今、物議を醸している。
食品安全行政を司(つかさど)り、添加物などの健康リスクを評価する内閣府の食品安全委員会は、5月17日、公式フェイスブックと公式ブログに、
〈食品健康影響評価書を引用した週刊誌記事について〉
と題する記事をアップし、注意喚起を行った。
食品安全委員会の事務局はこう説明する。
「週刊新潮の記事は食品安全委員会がとりまとめた食品健康影響評価書を引用して添加物のハザード(危険因子)の特徴について紹介していました。ところが引用したのは評価書のごく一部で、結論部分を引用していないため結果として正しくありませんでした」
さらに、東京大学名誉教授の唐木英明氏が代表を務める「食品安全情報ネットワーク」は、次のような「意見書」を「週刊新潮」編集長宛てに送っている。
〈記事においては、食品添加物の安全性試験のうちネガティブな一部のみを取り上げ、結論としてヒトの健康には影響がないと評価されていることを伝えていない箇所が散見されます〉
唐木名誉教授が語る。
「これほど間違いばかりが並んだ記事も珍しいということで意見書を出しました」
本当に市販されている「国産食品」が危険であり、「食べてはいけない」なら、国民の命、健康にかかわる重大問題である。物議を醸している記事とは、一体、どのような中身なのか。
見出しに〈「有害物質」入り「パン」〉
記事ではまず、冒頭の中戸川氏らが登場して、危険とされる添加物などを指摘。そして、それらが含まれた各メーカーの商品を、「食べてはいけない」として実名入りでリストにまとめているのだ。記事には刺激的な見出しが並ぶ。
〈「有害物質」入り「パン」ワースト27商品ランキング〉
〈「万病の元」になる「レトルト食品」全66商品〉
記事で複数回にわたり危険性が指摘されているのは、大きく分けて次の3点だ。
危険性が指摘されている3点とは?
(1)ハムやソーセージなどの加工肉に含まれる3つの添加物、亜硝酸Na(ナトリウム)とソルビン酸、リン酸塩
(2)レトルト食品や冷凍食品に含まれるタンパク加水分解物と酵母エキス、化学調味料の“味覚破壊トリオ”
(3)パンなどに含まれるトランス脂肪酸
連載第1弾で真っ先に紹介されているのが、(1)ハムやソーセージなどの加工肉に用いられる3つの添加物、すなわち亜硝酸Naとソルビン酸、リン酸塩の持つ危険性である。
特に、発色剤などに用いられる亜硝酸Naと保存料などに用いられるソルビン酸の2つは「相乗毒性」を持つとして、見出しにも、〈毒の相乗効果で発がん性の「ハム」「ウィンナー」〉と恐ろしい言葉が並ぶ。
新潮によれば、「相乗毒性」とは、〈それぞれが持つ毒性だけではなく、組み合わさることで毒性が増し、例えば、新たな発がん性物質が発生するような場合に使われる言葉〉だという。
根拠としたのが、食品安全委の「食品健康影響評価書」だ。
〈ソルビン酸が広範に使用される一方、亜硝酸塩も食肉製品の発色剤として多用され、両者がしばしば共存するという事実と、両者の加熱試験反応によりDNA損傷物質が産生されることが報告されている〉
前述のように、食品安全委はこの引用に対し見解を示している。新潮の引用部分には、以下のような続きがあることを指摘したのだ。
〈この結果は特別なin vitro (試験管内)における実験条件下で得られたもので、ソルビン酸と亜硝酸ナトリウムが食品中に共存した場合に実際に形成されることを意味するものではないとされている〉
食品安全委の添加物専門調査会で専門委員を務める中江大東京農業大学教授が解説する。
「『特別な実験条件』とは、亜硝酸Na溶液とソルビン酸溶液を混ぜて、90℃で1時間湯せんしたということです。体内で90℃に達することはありえないので、ヒトへの危険性を示す実験結果とは言えません」
この異議に対し、新潮は記事中で、「評価書」に掲載されたマウスの染色体異常を示す実験結果を引用し、反論した。この実験結果が、「相乗毒性」を示すと主張したのだ。だが、中江教授はこう指摘する。
「このマウス実験についても異常が出たという結果もあれば異常なしとする結果もあった。矛盾した結果が出ており、信頼できるデータではないんです。評価書でも〈ヒトの健康に対するハザードがない〉と明記しています」
「専門家ではないのでわかりません」
「相乗毒性」に関する信頼できるエビデンス(科学的根拠)はないのか。新潮にコメントを寄せ、「相乗毒性」を指摘してきた「食の安全を考える会」の野本健司代表に聞いた。
「90℃で1時間の加熱というのは、調理の過程で起こりえますから検証されなければなりません。ただ、相乗毒性が発生する詳しい条件については専門家ではないのでわかりません」
食品安全委の事務局はこう嘆息する。
「評価書全体をご覧になっていない可能性があります」
農水省HPを見ると……
「相乗毒性」はエビデンスがないようだが、亜硝酸Na単体のリスクについても、記事では、農水省のHPを引用して、こう記している。
〈発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがある〉
だが、実は、農水省HPを見ると、こう続く。
〈しかし、生体内における硝酸塩から亜硝酸塩への転換のメカニズムは複雑です。(中略、国連食糧農業機関と世界保健機関が合同で運営している食品添加物専門家会合は)硝酸塩の摂取と発がんリスクとの間に関連があるという証拠にはならないと言っています〉
前出の食品安全委の食品健康影響評価書と同じ構図だ。同委の添加物専門調査会の専門委員を務める伊藤裕才共立女子大教授が言う。
「亜硝酸塩はある条件下で発ガン性物質を作ります。しかし、添加物として摂取した亜硝酸塩から発ガン性物質が生成して人の健康に影響を与えているという科学的知見はありません」
NPO「食の安全と安心を科学する会」の山崎毅代表は、「硝酸塩は生の野菜に普通に含まれる」と言う。
「新潮の言うように、食品に添加されるわずかな量の亜硝酸塩を恐れるのであれば、野菜に含まれる硝酸塩も恐れなければいけないということでしょうか」
ハムなら1日51枚摂取しなければ上限量に達しない
続いて、〈過剰に摂取すると成人病や腎臓疾患を引き起こすという研究結果が出ている〉と新潮の記事で警鐘が鳴らされているリン酸塩はどうか。
リンは、人体に必須のミネラルである。厚労省では成人男性で1日1000mg、女性で800mgの摂取目安を定めている。一方、「過剰摂取によって健康への悪影響が否定できない量」である耐容上限量は1日3000mgとされている。前出の山崎氏が語る。
「『国民健康・栄養調査』のデータから換算すると、小さなソーセージを1日で67本食べるとようやく耐容上限に達することになります」
同様に、上の表に記したように、一般的なハムなら1日51枚、マルハニチロの「ソースとんかつ」なら、なんと88個摂取しなければ上限量に達しない。



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