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蚊を殲滅(せんめつ)せよ

遺伝子組み換えしたオスと交尾させて子孫を殺す。

ビル・ゲイツが蚊の開発に4億3600万円相当の資金を提供

蚊に媒介されるマラリアの撲滅は難事業である。テクノロジー界の巨人ビル・ゲイツが今、挑んでいるのはそれだ。

彼が設立した慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」は一世代以内にマラリアを根絶するため、遺伝子を組み替えたオスの蚊の開発を支援するという。


御存じのとおり、血を吸うのはメスの蚊だけである。

現在開発中のオスの蚊は、メスと交尾することで、生まれてくる蚊は成虫になる前に皆死んでしまうのだ。

交尾させることで子孫を絶やす。人間にフレンドリーな蚊

計画のキモとなるのが、遺伝子組み替え蚊のオスがメスに伝える自己抑制的な遺伝子だ。この遺伝子のためにメスが産卵し、それが孵化しても、幼虫は成虫になることなく死んでしまう。

蚊が血を吸い始めるのは成虫になってからなので、危険な吸血蚊の脅威は消えることになる。蚊によって媒介されるマラリアの拡散を食い止めることにもなるだろう。

遺伝子組み替え蚊を開発するのはイギリスのオキシテック(Oxitec)社だ。メスは同意しないだろうが、同社はその蚊を「フレンドリーな蚊」と呼んでいる。

オキシテック社はすでにジカウイルスに対応する遺伝子組み替え蚊を開発している。地域によっては、ジカウイルスを媒介するネッタイシマカが90パーセントも減ったという。

しかしマラリアを媒介するハマダラカには新しく遺伝子を組み替えたタイプが必要になる。それでも2020年末までには試験の準備が整う見込みである。


倫理的な問題もはらんでいる

このように成虫になる前に子供の蚊を殺してしまう遺伝子組み替え蚊については、必ずしも全員が賛同しているわけではない。

オキシテック社の取り組みは環境保護団体のフレンズ・オブ・アースから強い批判を浴びてきた。

2012年、同団体のエリック・ホフマンは、「蚊の試験は、環境、人の健康、倫理的リスクに関する包括的かつ公平な調査を行う前に実施すべきではない」と述べている。

遺伝子組み替え蚊は、自然発生する蚊と交尾し、生存できない子孫を作ることで野生の個体数を減少させ、それによってデング熱の感染を防ごうというものだ

同社は公共や環境の安全性よりも利益を重視しているとして、各方面から批判を浴びている

遺伝子組み替え蚊が初めて放たれたのは、バイオセーフティ関連の法制度がまったくないケイマン諸島だった

オキシテック社は世界の遺伝子組み換え昆虫に関するリスク評価ガイドラインの策定に深く関与している。このため独立した第三者による調査がないことや、利益対立が生じることについて懸念されている(ホフマン氏)



マラリアの撲滅に全力を尽くすビル・ゲイツ氏

一方、ビル・ゲイツ氏は年間44.5万人の人が命を落としているマラリアの根絶に大規模な支援を行なってきた。オキシテック社も以前から支援しており、研究初期段階だった2010年に5億円近い資金を提供したことがある。

マラリアに感染すると、10日から4週間以内に、40度近くの高熱、頭痛、吐き気といった症状が現れる。ほかにも脳内の血管の腫れ、肺水腫、臓器不全(腎臓、肝臓、膵臓)、貧血、低血糖などの症状もあり、年間2.16億人が感染し、44.5万人が犠牲となっている。

ちなみに地球上で一番人を殺すのは、人ではなく蚊である。




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