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アリの救助行動


傷ついた仲間をアリが救助

「救助行動」はどのように進化してきたか、アフリカのマタベレアリ

人間と同様、アリも戦争をする。サハラ砂漠以南のアフリカに生息する黒く小さなマタベレアリ(Megaponera analis)は、しばしば大好物のシロアリと激しく衝突する。

おなかをすかせたマタベレアリは、決死の覚悟でシロアリの塚をこじ開け、暗闇に飛び込む。

ところが、最新の研究によれば、マタベレアリには戦死者を減らす戦略があるという。負傷した戦友を巣に連れ帰るというもので、ほかのアリには見られない行動だ。

研究を率いたドイツ、ビュルツブルク大学のエリック・T・フランク氏は、傷ついた兵隊アリを丁重に扱っているようにしか見えないかもしれないが、この行動にはきちんとした意味があると強調する。フランク氏はアリ学の専門家だ。

「間違いなく、コロニーの利益になります。負傷したアリたちはまたいずれ奇襲攻撃に参加でき、コロニーの一員として機能するためです」。コートジボワールのサバンナの湿った森でフランク氏らは野生のアリを観察し、4月12日付けのオンライン科学誌「Science Advances」に研究論文を発表した。

もし負傷した兵隊アリが放置され、そのまま戦死していたら、コロニーの規模は今より30%小さくなっているだろうと、フランク氏らは試算している。アリの救助行動の価値を実験的に評価した研究はこれがはじめてであり、ほかの動物の研究にもつながるかもしれない。

仲間は決して見捨てない

急襲を受けたシロアリは武力で抵抗し、マタベレアリの肢や触角を引きちぎったり、首を落としたりする。

さらに、シンプルな戦略がもう1つある。マタベレアリの体に必死にしがみ付くというものだ。敵を自らの手で負傷させられはしないが、こうするとアリの動きはずっと遅くなる。

その結果、シロアリを背負った個体は仲間から後れを取り、そばで待ち構えるクモの餌食になる可能性が高まるというわけだ。

対して、戦場からこれらのアリを運び出せば生き延びられるし、巣に戻れば邪魔なシロアリをはぎ取ることもできる。

たとえ複数の肢を失っても、アリは1日もあれば回復してしまう。驚くことに、救出されたほぼすべての個体が再び奇襲攻撃に参加している。

ほかの種のアリでも、命を落としそうな仲間を助けることはあるが、フランク氏らが観察した行動はマタベレアリに特有のものだ。なぜなら、すぐに助けなければ死ぬわけではない仲間まで救出しているからだ。

「これは行動進化の素晴らしい一例です。ある個体がなぜその行動をするのかを知る必要はありません」

親切心からではありません

アリたちは仲間に共感していると考えたくなるかもしれないが、それは違うとフランク氏は断言する。「アリたちは親切心から傷ついた兵隊アリを助けているのではありません」

事実、負傷した個体の大顎から分泌される化学物質を健康な個体に付けてみると、救助行動を誘発するフェロモンであることがわかった。つまり、救助行動を取ったアリたちは、仲間が負傷していることにすら気付いていない可能性がある。

米コロラド大学ボルダー校でアリの行動を研究する生物学者のヘレン・マクリーリー氏は、この研究結果に驚いている。負傷したアリがコロニー全体にとって大きな価値があるとは思ってもみなかったためだ。

しかし、「傷付いた仲間を救出する行動は、コロニーの規模と力を保つのに役立つようです」とマクリーリー氏は言う。

「救助された個体の寿命が延びるのはもちろんですが、進化という文脈において何より重要な点は、コロニー全体の助けになることです」

つまり、すべてのアリが勝者になるということだ(ただしシロアリとクモを除く)。




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